犬では比較的まれな疾患に、副腎皮質機能低下症(アジソン病)があります。当院では、過去17年で4頭(雑種1頭、ボーダーコリー1頭、トイプードル1頭、Wコーギー1頭)が診断・治療されており、今週また一頭のプードルのワンちゃんが診断され、治療を開始しました。
副腎とは、腎臓のすぐ上にある小さな(約5mm)器官で大切なホルモンを数種類分泌する内分泌器官です。
大きく2層に分かれ、副腎皮質からはいくつかの副腎皮質ホルモン(糖の利用を制御する糖質ホルモン・電解質を制御する鉱質コルチコイド:ミネラルコルチコイド・生殖機能を制御する性ホルモン)が出ています。
副腎髄質からは、カテコールアミンホルモンと言われるエピネフリン、ノルエピネフリンが出ています。
この副腎皮質の機能が低下してしまうのが、副腎皮質機能低下症(アジソン病)です。
原因は、殆ど場合、特発性(免疫介在性)で、自分の免疫反応によって副腎皮質が侵され、機能が低下しています。まれではありますが、肉芽腫性疾患や転移性の腫瘍、下垂体性腫瘍などによっても起こることがあります。
症状は、様々で、元気消沈、食欲不振、嘔吐、体重減少、悪化と回復の繰り返し、下痢、過去の治療に対する反応、振戦、多飲多尿などです。
時には、急性症状として、急に元気がなくなり、ふらついたり倒れたりし、ショック状態に陥り、迅速に治療をしなければ、命に関わることがあります。
一般身体検査所見
- 犬:沈うつ、虚弱、脱水、虚脱、低体温、毛細血管再充填時間(CRT)延長、メレナ、弱い脈拍、徐脈、腹部の痛み、脱毛。
- 猫:脱水、虚弱、CRT延長、弱い脈拍、徐脈。
一般血液検査/生化学検査/尿検査
- 血液学的な異常として、貧血、好酸球増多症、リンパ球増多症などが挙げられる。
- 生化学検査では、高カリウム血症、高窒素血症、低ナトリウム血症、低クロール血症、総CO2の低下、高カルシウム血症、肝酵素の上昇、血清アルカリホスファターゼの上昇、低血糖などがみられる。
- 尿検査では、しばしば尿濃縮能の低下が認められる。
- 副腎皮質機能低下症でも電解質異常が認められない症例もいる。
確定診断 ACTH刺激試験を行い血清コルチゾール値が低値であることを証明します。
治療 生理食塩水の点滴治療と共に、生涯にわたるグルココルチコイド・ミネラルコルチコイドの投与が必要。また、旅行やペットホテル、入院などストレスのかかる場合は気を付けなければいけません。
予後 ほとんどのばあ愛、治療が適切である限り、良好に推移し、一般的寿命を全うすることが出来ます。