『猫の泌尿器症候群(FUS)』
写真はこの病気の猫ちゃんの血尿
猫の泌尿器症候群は、尿のpH(酸性・アルカリ性の度合)がアルカリ性に変化することによって、尿中に「リン酸アンモニウムマグネシウム(通称:ストラバイト)」と言う成分などの結晶や結石が出来、頻尿・血尿・排尿困難などの症状を起こす病気です。
*尿が酸性になることによって「シュウ酸カルシウム」という結石が出来る場合や、晶や細菌感染の見られない場合(特発性)もあります。
結晶(または結石)や粘液栓(砂状物)が尿道(ペニス先端)に詰まって全く尿が排泄できなくなり、急性腎不全から尿毒症や高カリウム血症をおこし、死に至ることもあります。
<原因>
冬から春にかけて発生が多く見られ、雄も雌も同じように発症しますが、雄の方が尿道が長く直径が細いために、結晶や粘液栓が尿道に詰まりやすく、重篤な状態になることが多いです。
原因は不明ですが、餌の中に含まれるマグネシウムの量が、この病気の発生に関係していると言われています。⇒いわゆる、体質も関係しています。
また、飼育環境の変化・気温(寒冷)による水分摂取量の減少・肥満・ストレスなども発症の重要な要因になります。
<症状>
①排尿困難・頻尿:何度もトイレに行く・排尿姿勢をするが尿が出てない・排尿中に鳴く、生殖器をしきりになめる など。
②血尿
③元気・食欲の低下:尿道が完全に閉塞し腎不全に陥った場合は、嘔吐や沈うつ・衰弱などの症状が見られます。
<診断・検査>
・上記の症状及び腹部の触診(大きくて固い膀胱が触知出来ます)で、診断できます。 ペニスを露出したままの状態やペニス先端の砂状物の粘液栓子が確認できたりします。
・超音波検査で、肥厚した(ぶ厚い)膀胱壁及び膀胱内に砂状の結晶が確認できます。
・結晶の有無や他の疾患(腫瘍や神経性の原因など)との鑑別をするための尿検査、全身状態(腎機能や脱水の程度など)を調べるための血液検査を行います。
<治療>
尿道の閉塞を伴う場合と、閉塞を伴わない場合では治療が異なり、閉塞を伴う場合は早急な処置が必要となります。
1.閉塞を伴わない場合
①抗生剤の投与:細菌性膀胱炎の治療、または二次感染の防止のために行います。
②食餌療法:ストラバイト結石を溶解する餌(ヒルズのs/d)や、結晶・結石が出来にくくする餌(ヒルズのc/d・ウォルサムのpHコントロールなど)を与えます。
2.閉塞がある場合
①尿道カテーテルの挿入:尿道の閉塞を取り除いて尿を排泄させて、膀胱内を洗浄します(その時に鎮静・麻酔が必要な場合もあります)。
②輸液(点滴):脱水や尿毒症の治療及び尿量を増加させるために行います。
③抗生剤の投与:細菌性膀胱炎の治療、または二次感染の防止のために行います。
<予防:再発予防>
この病気は再発の可能性が非常に高い(再発率30~70%)ので、予防が重要です!
①食餌:マグネシウム含量の少ないフード(ヒルズc/d、s/dウォルサムpHコントロールなど)を与える→水とそれらのフード以外のものはいっさい与えない!
②肥満の解消:肥満・運動不足・ストレスは重要な要因となるので、これらを取り除くようにします。 ⇒去勢手術なども。
③水:猫が新鮮な水を複数の場所で飲めるように、水入れの数を増やします。
*再発を繰り返す猫では、尿道を切開して広げる手術が必要になることもあります。 ⇒そうならない様に予防用フードで確実に管理してあげましょう!(これが一番大切ですよ)
*トイレに行く回数が多くなっていないか、尿は出ているか、排尿時の痛みがあるか、尿の色は正常か(血尿ではないか)、食欲や元気の有無 などよく観察し、異常があればすぐに受診してください。
ネコには非常に多い病気です。