乾性角結膜炎(ドライアイ)
涙の主な働きは、角膜の保護・角膜への栄養分の供給・眼表面の細菌や異物を洗い流す
・眼瞼の動きを滑らかにする、などです。
「乾性角結膜炎」とは、『涙液の量的または質的な異常により角結膜の上皮が障害
された状態』を言います。
① 量的異常:涙腺における涙液の産生が減少した状態。いくつかの原因がありますが、
主な原因は「免疫介在性」の涙腺炎と言われています。
② 質的異常:涙液量は正常かそれ以上であるにもかかわらず、油成分やムチン成分の
異常により涙液が眼表面で安定しないため蒸発してしまう状態。
*涙液は油層・水層・ムチン(粘膜)層の3層からなります。油層の成分は上下の眼
瞼(まぶた)の内側にある「マイボーム腺」と呼ばれる脂腺から分泌され、水層の蒸発
を防いだり、表面張力により涙液があふれるのを防ぐ作用があります。ムチン層は涙液
中の免疫作用物質を保持したり、細菌や異物などから眼表面を排除する作用があります。
<症状>
・結膜の充血
・粘液膿性の眼脂(目やに)
・羞明(しゅうめい=眼をしょぼしょぼさせること)
・角膜潰瘍
・急性例では眼の痛み など
<診断>
シルマー試験:目盛りのついた濾紙を下眼瞼と角膜の間に挟み、1分間に涙液が何ミリ
吸収されるかを測定します。
15mm以上:正常
11~14mm:初期の乾性角結膜炎
6~10mm:軽度~中程度の乾性角結膜炎
5mm以下:重度の乾性角結膜炎
*シルマー試験は涙液の産生量を判断する検査で、質的の乾性角結膜炎は診断できません。
フルオレセイン試験:角膜に傷があるかどうかを調べる検査です。角膜に傷があれば
その場所が緑色に染色されます。
<治療>
①涙液産生刺激:免疫抑制作用のある点眼薬(眼軟膏)により、涙液産生を刺激します。
②涙液代替:水分の補給と眼表面の洗い流しのために人工涙液を使用します。
③細菌感染抑制:角膜表面が乾燥していると細菌感染を起こしやすくなるため、抗生剤
の入った点眼薬を使用します。
④炎症を抑える:点眼薬であまり改善が見られない場合は炎症を抑えるためにステロイド
の飲み薬を使用することがあります。
⑤マイボーム腺のマッサージ:油層の成分や排出が異常な場合、蒸しタオルなどを眼瞼に
当てて温め、その後指で眼瞼全体をマッサージしたり、ピンセットなどで
圧迫してマイボーム腺内容物を強制的に排出させることもあります。
*角膜に傷があったり、犬が眼を気にしてこする仕草をする場合はエリザベスカラーを装
着します。
症状が改善されてきたら、点眼薬の種類や回数を減らしていきますが、治療は一生涯必要
となります。