この一ヶ月、食欲不振やおりものを主訴に来院されるワンチャンが多く見られ、何頭かががこの病気、子宮蓄膿症でした。
子宮は、受精した卵子(受精卵)を着床させて胎仔を発育させるための部位で、犬や猫の子宮はY字形をしていて、「子宮体」という短い部位と「子宮角」という二つの長い部位から形成されています。
子宮蓄膿症とは、子宮内で細菌が増殖して膿が貯留する病気で、発情に関与するホルモンの影響を受けるため、発情終了後2〜3ヶ月以内に多く見られます。
高齢で出産経験のない犬に多く見られますが、若い犬や、出産経験のある犬にも見られます。
<症状>
・元気消失
・食欲不振
・多飲・多尿(多量に水を飲み、たくさんの尿をします)
・嘔吐
・外陰部からの膿状のおりもの など。
子宮内に溜まった膿が外陰部から排泄される「開放型」と、排泄されない「閉鎖型」があり、閉鎖型では、子宮が破裂してお腹の中に膿が漏れ出して、急激に状態が悪化することもあります。
<検査>
腹部の超音波検査で、子宮内に液体(膿)が貯留しているかどうか確認します。多量の膿が貯留している場合は、X線検査で太く管状に膨らんだ子宮が確認できます。
子宮に細菌感染が起こるため、白血球が増えます。食欲不振や嘔吐による脱水や、敗血症(血液中に細菌が存在する状態)による腎臓や肝臓の機能障害が起こっていることもあり、これらを調べるために血液検査を行います。
<治療>
まず、脱水や腎臓機能回復のために、輸液と抗生剤の投与を行います。
① 外科的治療:卵巣子宮摘出術を行います。
麻酔・手術・合併症の危険はありますが、手術によって完治
することが出来ます。
②内科的治療:食欲・元気があり全身状態が悪くない場合は、抗生剤等の投
与で治癒する場合があります。
* ただし、再発する可能性は充分にあります。
③ホルモン療法:子宮を収縮させる働きのあるホルモン剤を注射して、子宮
内の膿を外に排泄させます。一日1〜2回の注射を3〜5日
連続で注射します。
*この方法は、「開放型」で全身状態が悪くなく、繁殖に用
いられる犬や猫で行われることがありますが、嘔吐や呼吸
が荒くなるなどの副作用が見られたり、高率で再発が起こ
るため、通常は子宮卵巣摘出術を行います。
※わからないことや心配なことなどありましたらどんなことでもご相談下さい。