今年に入って何頭かの緑内障の犬が来院されております。
殆どの犬の症状は、目が痛そうにつぶっている、目が赤い、目が白くて赤いなどです。緑内障は眼圧測定を行い、高眼圧であることを診断していきます。
いろんな原因、いろんな続発症があるので確実に原因を見極めなければいけません。
検査としては、眼圧測定、細隙灯(スリット)による検眼、眼底検査などを行います。目の炎症(ぶどう膜炎)などの有無、視力の有無、網膜の病変などを確実に検査しなければいけません。まれに糖尿病や腫瘍などによっても併発することが多いのも特徴で、必ず全身疾患の有無の検査も同時に行います。
緑内障の治療は、点眼内科治療と外科のコンビネーション治療です。外科治療は特殊な治療なので二次病院としてグラン動物病院をご紹介しております。緑内障は、迅速に診断し、手術に入らなければいけません。当院では迅速で確実な診断を行い、的確にそして素早く二次病院で外科が行えるように心がけております。
しかし、実際には人医では考えられない程の状態で見つかることが多く、手遅れのことも少なくありません。
大切な目。眼科疾患は、非常にデリケートで、迅速な診断治療が最も必要な疾患のひとつです。いつも気にしてあげてくださいね。
「緑内障のポイント」
緑内障とは、
視神経及び網膜が正常に機能できなくなるほどに眼内圧(IOP)が上昇している疾患。
①原発性緑内障
先行あるいは付随する眼疾患や外傷のないIOPの上昇。
典型的には特異的なものや遺伝性が疑われる。
開放隅角・閉塞偶角
②続発性緑内障
その他の眼疾患や外傷などに合併あるいは続発したIOPの上昇。
犬では原発性緑内障の少なくとも2倍、猫では7倍の頻度。
・水晶体関連(特に脱臼、亜脱臼、白内障に関連している)
水晶体脱臼・亜脱臼・膨張水晶体(白内障)・水晶体融解(白内障)
・外傷性
出血・刺創異物・外傷
・炎症性
隅角を閉塞させる周辺部虹彩前癒着
虹彩後癒着
細胞、フィブリンなどによる隅角閉塞
・眼内腫瘍
原発性 メラノーマ(虹彩、毛様体)、その他
続発性 なんでも(特にリンパ腫)
*通常片眼性に発症するが、後に対眼にも発症する(中央値8ヶ月)
→予防的に対眼も点眼。予防したり遅らせることが可能(中央値32ヶ月)
ベトプティックbid、チモロールbid
発生率
犬 119頭に1頭、 猫 367頭に1頭
「緑内障の診断治療チャート」
→高眼圧
→視力の有無(メナース反応、綿球落下、後追い行動)
→角膜の混濁 あり・無し
→混濁あり→エコー→レンズ脱臼の有無(前方・後方)
網膜剥離の有無・視神経乳頭の状態観察
腫瘍の有無 など観察
→混濁無し →視力の有無(メナース反応、綿球落下、後追い行動)
→眼球観察(観察できなければエコーへ)
→レンズの脱臼の有無(亜脱臼・完全脱臼、前方・後方)
眼内出血の有無
ぶどう膜炎の有無(水晶体タンパク漏出の有無の推測)
網膜剥離の有無・視神経乳頭観察
網膜変性の有無
腫瘍の有無 など観察
視力が無い場合、OPE後の視力回復を期待してOPEするか否か決めてもらう。
「治療」
→OPE希望
→すぐに先二次病院に行く事が、可能・不可能
→可能→そのまま行く
→不可能(1日~数日後):どんな手を使っても眼圧下げる:D-マンニトール
→脱臼無し→キサラタンの点眼1回+チモロール・リズモン点眼処方
→さらに炎症あり→ステロイドの注射・内服処方
→脱臼あり→チモロール・リズモン点眼処方
→さらに炎症あり→ステロイドの注射・内服処方
→OPE希望せず
→脱臼無し→キサラタンの点眼1回+チモロール・リズモン点眼処方
→さらに炎症あり→ステロイドの注射・内服処方
→脱臼あり→チモロール・リズモン点眼処方:キサラタンもあり。
→さらに炎症あり→ステロイドの注射・内服処方
→OPEの有無にかかわらず
内服・アムプロジン 0.1-0.4mg/kg sid-bid
・メニワンアイ
→重度の状態で見つかることが多いので、最終的に牛眼化し、眼摘・義眼挿入手術・放置となることもやはり多い。
「OPE方法の選択」
①レーザー強膜凝固TSCP:安価(3万円)、炎症起こる。眼圧安定いろいろ。眼球癆も。
②偶角インプラントGI:10万円、炎症で詰まることあり。今とところこれ!
③管錐術:出血多い。
+白内障の手術
+脱臼の補正手術
→現在一番効果があるのは、偶角インプラントGI
「症例パターン」
①ぶどう膜炎+緑内障 →随時検討
②白内障+緑内障 →白内障OPE(PEA+IOL)+GI
③レンズ完全脱臼+緑内障 →レンズ除去+レンズ挿入+GI
④レンズ亜脱臼+緑内障 →脱臼を防ぐOPE+GI
⑤レンズ脱臼+ぶどう膜炎+緑内障 →随時検討
⑥緑内障のみ
→ ぶどう膜炎併発時が悩み所。人医とは違う。
内科的にも、本当はマンニトール、キサラタンは禁忌だが。
手術も本当は原発性が適応だが。
ぶどう膜炎の重症度によって個々に判断して対応。
重度のぶどう膜炎で治療の反応が悪い場合は、眼内腫瘍を強く疑う。
ある程度までコントロールできて“視覚があり”、なおかつ内科的に無理なら、
GIかTSCP(径強膜毛様体光凝固)のどちらかを選択せざるをえない。