猫の大動脈血栓塞栓症 Aortic Thromboembolism
猫の中年期から高齢期(平均7.7歳)に多く見られる”突然の後肢麻痺”が症状の病気です。
「症状」
心臓で発生した血栓・血餅が大動脈に流れ、詰まることによりその血管の支配領域が虚血(血行が遮断される。血が流れない)を起こすものです。多くの場合、心疾患(心筋症)を持っており、心臓の中で血液の流れに乱流が起きたりして凝固促進し、心臓の中に血栓・血餅が形成されます。それが突然大動脈に流れ、遠位の部分でつまり塞栓します。
多くの場合、下腹部の腹大動脈が分岐する鞍部と呼ばれる部分に塞栓し、下半身・後肢の血行障害による麻痺が見られます。麻痺が見られるだけでなく、疼痛もあり、泣いたり不安げな様相を呈し、足先・爪の色が暗色になり、股動脈の拍動も感じられなくなります。時間の経過と共に血行遮断による肢端からの壊死が見られる場合もあります。
また、心疾患による肺水腫や呼吸困難、頻呼吸も同時に起こしている事も多いです。
稀に、片方の足だけ、前肢・腎臓・消化器官などにも起こります。
「検査」
血液検査 特徴的な変化はありません。CKが上がっている場合もある。
レントゲン検査 肺水腫や心肥大。
血管造影検査 腹部大動脈の遠位塞栓
心電図 洞調律で頻脈。その他様々な不整脈もある事も。
エコー検査 心筋肥大、左心房拡大が特徴的なことが多い。肥大型心筋症がもっとも多く、拘束型も稀にある。
「治療」
カテーテルによる血栓除去法 24時間以内 (当院では、第一選択としてこの方法をオススメしております。)
外科的血栓摘出 開腹手術による血栓の除去
血栓溶解療法 ウロキナーゼなどの血栓溶解剤の持続的投与
対症療法 心疾患に伴う肺水腫・心機能改善を計る。
「予後」
短期、長期的に予後不良な事が多い。
血栓症から回復した猫の予後は、数ヶ月から1年と言われ、血栓症の再発、突然死も多い。