犬の膝蓋骨脱臼(膝のお皿の脱臼)は、小型犬(プードル・ポメラニアン・ヨーキー・柴など)に見られる運動器疾患です。
膝蓋骨は、大腿骨(太ももの骨)に置いて、大腿四頭筋群(太ももの筋肉)と膝蓋靱帯(むこうずねまでの靱帯)の間にあって膝関節の伸展機構のひとつの機能を果たしています。
膝関節の屈曲伸展(曲げ伸ばし)において大腿骨の滑車溝という溝の間を適切に滑ることで太ももの筋肉による膝の曲げ伸ばしをスムーズにしています。
また、成長期にはそのスムーズな動きにより大腿骨、膝関節、脛骨(下腿)の正常な成長を促します。
成長期に膝蓋骨が脱臼を起こしていると、大腿骨が曲がったり、膝関節のアライメントが狂いよじれが起こったりし、膝の曲げ伸ばしの際に痛みが出て跛行(びっこ)が出たりします。
原因は不明な点が多いのですが、遺伝的(先天的)な要因や外傷など後天的な要因と考えられています。
どちらにしろ①大腿骨の滑車溝が浅く、②脛骨粗面の変位などにより膝蓋骨の脱臼が起こります。
また、脱臼が起こることにより①や②そして膝関節の近辺の支持組織(筋肉、靱帯など)に異常がさらに起こってきます。
(手術の適応)
①若齢(12ヶ月令の成長期)のものは基本的には手術。成長期の終わり近くで見つかり、症状の見られないものには保存療法も考える。
②成犬(小型犬)で疼痛、機能障害のあるものは手術。
③成犬(小型犬)で症状のないものや軽度のものは経過観察。
④中型、大型犬は手術を行う。(大概は症状を伴っているので)
*小型犬において成犬になってから見つかった犬にいて、前十字靭帯断裂や関節炎の進行が、保存療法(手術をしないで経過を観察)よりも外科療法(手術)により改善されるという報告は今のところありません。
*子犬のワクチン接種時期に見つかった場合、後肢の屈伸運動を1日300-400回行う事で膝関節の成長を促す効果があります。