院長の寺田です。

No.40 ドッグウォーク参加ありがとうございました。


No.39 愛犬のシャンプー


No.38 狂犬病
院長の寺田です。
先日、東京で行われました日本医師会・日本獣医師会による連携シンポジウム
「-人と動物の共通感染症を考える-狂犬病の現状と対策」
に参加してきました。
エボラ出血熱などの話題もあり、会場には溢れんばかりの参加者でした。日本では60年以上発生していない狂犬病ですが、まだ世界では最も恐ろしいウイルス性の伝染病のひとつであり、参加された海外の講演者からも切実な現状が話されておりました。
また、我が国では36年ぶりに発生した人の狂犬病事例における生々しい臨床経過、検査所見、解剖所見その際の予防法、課題なども講演されました。
人間が感染し発症するとそれはそれは恐ろしい症状を呈し、100%死亡します。我々も獣医師としてこれからも狂犬病予防注射の啓発と徹底を行わなければ行けないと深く思いました。
「狂犬病」
狂犬病は、今もなお世界中で毎年55,000人以上が死亡している動物由来感染症(人畜共通感染症)で、人間が感染・発症すると急性・進行性で脳炎・神経症状を呈し、致死率100%(10日で死亡)の伝染病です。
ほ乳類(犬、アライグマなど)に感染する狂犬病ウィルスが原因で、人の狂犬病の95%は犬の咬傷からの感染です。
広く行われている狂犬病の予防接種の目的は、犬への予防注射によって愛犬が狂犬病にかかることを予防し、加えて人への感染を防ぐことができます。
伝染病を防ぐ唯一の手立ては、「全体の70%以上の予防接種率により流行をを防ぐ。」だと言われます。現在かなりこの数字より日本は低いの現状です。
狂犬病予防接種は、国の狂犬病予防法で定められた国の防疫事業です。
飼い主には、狂犬病予防法によって以下のことが義務づけられています。必ず受けましょう。
1.市町村に登録すること
登録によって、どこの地域に何頭の犬がいることがわかり、狂犬病が発生した時に
まん延を防ぐ第一歩になります。登録すると「鑑札(かんさつ)」が交付されます。
2.犬に鑑札と注射済票を付けること
3.犬に毎年狂犬病予防注射の予防を受けさせること
それに伴い「注射済票」の交付を受ける。
①市町村への登録(鑑札交付)
②毎年の予防注射の接種
③市町村からの注射済票の交付
予防注射を受けると、その証明として市町村から「注射済票」の交付を受けなければなりません。
*市町村から発行される「注射済票」です。獣医師の予防接種証明書ではありませんのでご注意下さい。
*当院加入の西播開業獣医師会は、西播地域の各市町村から犬の登録及び狂犬病予防注射業務の委託を受けております。
注射と同時に、登録・鑑札や注射済票の交付が院内で行えます。ご利用下さい。
詳しくは、厚生労働省ホームページ「狂犬病について」をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/


No.37 ネコの大動脈血栓塞栓症
猫の大動脈血栓塞栓症 Aortic Thromboembolism
猫の中年期から高齢期(平均7.7歳)に多く見られる”突然の後肢麻痺”が症状の病気です。
「症状」
心臓で発生した血栓・血餅が大動脈に流れ、詰まることによりその血管の支配領域が虚血(血行が遮断される。血が流れない)を起こすものです。多くの場合、心疾患(心筋症)を持っており、心臓の中で血液の流れに乱流が起きたりして凝固促進し、心臓の中に血栓・血餅が形成されます。それが突然大動脈に流れ、遠位の部分でつまり塞栓します。
多くの場合、下腹部の腹大動脈が分岐する鞍部と呼ばれる部分に塞栓し、下半身・後肢の血行障害による麻痺が見られます。麻痺が見られるだけでなく、疼痛もあり、泣いたり不安げな様相を呈し、足先・爪の色が暗色になり、股動脈の拍動も感じられなくなります。時間の経過と共に血行遮断による肢端からの壊死が見られる場合もあります。
また、心疾患による肺水腫や呼吸困難、頻呼吸も同時に起こしている事も多いです。
稀に、片方の足だけ、前肢・腎臓・消化器官などにも起こります。
「検査」
血液検査 特徴的な変化はありません。CKが上がっている場合もある。
レントゲン検査 肺水腫や心肥大。
血管造影検査 腹部大動脈の遠位塞栓
心電図 洞調律で頻脈。その他様々な不整脈もある事も。
エコー検査 心筋肥大、左心房拡大が特徴的なことが多い。肥大型心筋症がもっとも多く、拘束型も稀にある。
「治療」
カテーテルによる血栓除去法 24時間以内 (当院では、第一選択としてこの方法をオススメしております。)
外科的血栓摘出 開腹手術による血栓の除去
血栓溶解療法 ウロキナーゼなどの血栓溶解剤の持続的投与
対症療法 心疾患に伴う肺水腫・心機能改善を計る。
「予後」
短期、長期的に予後不良な事が多い。
血栓症から回復した猫の予後は、数ヶ月から1年と言われ、血栓症の再発、突然死も多い。


No.36 世界手洗いの日
院長の寺田です。
ユニセフは、10月15日を「世界手洗いの日」として、正しい手洗いの普及・啓蒙を行っています。感染症の予防のために、特に子供たちのためにしっかり教育・指導してあげてくださいね。http://handwashing.jp/
動物から人間に感染する病気(人畜共通感染症)も多くあります。人間と人間の間だけではなく、動物と人間との間の感染症の予防のためにも、手洗いは欠かせません。特に室内で飼われている犬や猫との過剰な接触として、口移しでエサをあげる行為、過剰に顔を舐めさせる行為などは非常に危険な場合がありますし、食事の前の手洗いは人畜共通感染症においてとても大切な予防処置です。正しく動物を飼う上でも”手洗い”をもう一度周知徹底して下さい。
さて皆さん、今週はノーベル賞の発表ウィークですが、医学史上最も偉大な発見は「ペニシリンの発見」と「手洗いによる感染症の予防効果の発見」だと言われているのをご存じでしょうか。
ペニシリンの発見は言わずもがな、抗生物質の事で、これにより有史以来人間を悩ませていた細菌感染に打ち勝つことが出来るようになったのです。これは第一次世界大戦(1914年)後にイギリスの医師フレミングにより1928年発見されました。(また抗生剤についてお話ししたいと思っています。)
手洗いによる感染症の予防効果を発見したのは、ハンガリーの産科の医師ゼンメルワイスです。1861年の事です。1840年代産婦が産褥熱で死亡率は非常に高いものでした。
ゼンメルワイスは、病棟ごとに産褥熱の死亡率がかなり違うこと、死体解剖室にいた医師がそのまま分娩室に移動してお産に従事していたこと、医師には死体からの”匂い”がついていたこと、と言った事柄から、死体についた微粒子が医師から産婦に移されるのだろうと考えました。その対策として、ゼンメルワイスは医師に対して、診察に入る前には必ず塩素溶液で手洗いをするように指示しました。その結果、ある病棟の産褥熱の死亡率は12%から1%に激減しました。(世紀の大発見も当時は全く認められず、ゼンメルワイスは不遇の死を迎えるのですが、この辺りの話は以前ご紹介した「マンガ、医学の歴史」に記載されています。ぜひそちらも読んでみて下さい。)
この手洗いという予防処置は全ての感染症に共通するものです。本当に大発見であり、今もなお、最も大切な行為・行い・行儀といえるでしょう。もう一度、見直しましょう。
