昨日、血尿を呈したWコーギーのワンちゃんが診察に来られました。突然の血尿と元気食欲消失、若干の努力性呼吸でした。
検査の結果、フィラリア症の急性症状である大静脈症候群(ベナケバシンドローム)と診断されました。咳・元気がない・腹水などのフィラリア症状の中で一番甚急性の症状です。特徴としては血尿です。これは血色素尿で醬油みたいな色と表現されたりしますが、赤血球が血管の中で溶血(潰れる)したことによりみられる所見です。
肺動脈や右心室に寄生するフィラリアが、何かの拍子に右心房や三尖弁に絡みつくように移動し、血液の溶血が起こります。この状態が大静脈症候群といわれ、非常に重篤で急性な右心不全と肝機能不全や腎不全を引き起こします。
秋や春先の三寒四温の時期に多いのも特徴で、その甚急性の症状を落ち着かせるのに早急の手術が必要となります。
昨日来られたワンちゃんも緊急の手術(経静脈から心臓の中に鉗子を挿入し、移動してきたフィラリア虫体を摘出)を行いました。一時的に非常に危ない状態を呈しましたが、どうにか対症処置で事なきを得、今朝はすでに血尿も見られず、お水も飲むようになりホッとしています。
写真は血液を遠心分離した様子で、右は正常な状態、左が溶血した所見です。
また、摘出したフィラリアの塊です。
いやあ、いつ見ても恐ろしい寄生虫です。フィラリアは。まだまだこの地域は多いですね。それは予防率が低い証拠です。皆さん、予防をやはりお忘れなく。