近年、犬の寿命が約10年伸びたのはこのお薬のおかげです。
ノーベル生理学・医学賞を授賞された北里大学特別栄誉教授 大村智博士は、静岡県の土壌から放線菌を発見し、メルク社と共同でこの放線菌が生産する抗寄生虫薬エーバメクチン、イベルメクチンを発見・開発し製剤化されました。
「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」が受賞理由です。
「イベルメクチンの人類への貢献」
①人類の食料の増産・確保への貢献
イベルメクチンは、人間の食料である家畜(牛・豚・馬・山羊・羊)の消化管内寄生虫(お腹の虫、回虫・糞線虫など)と皮膚病の元になる疥癬・ダニを駆除します。
これにより家畜の発育促進・健康増進がすすみ、食料の増産と確保が飛躍的に進みました。
世界中の家畜に最も使われているお薬で、メリアル社は家畜への使用から得られた利益でアフリカの人々へのイベルメクチン製剤の無料配布が行えるようになりました。
②人類の健康と福祉への貢献
イベルメクチンは、人間の寄生虫の病気である熱帯地方の風土病オンコセルカ症(河川盲目症)、また皮膚病である人疥癬を駆除します。
オンコセルカ症とは、人間に回虫である回旋糸状虫による感染症です。河川で繁殖するメスのブユが人を刺して感染し、激しい痒みリンパ節の腫れ、視覚異常、失明を引き起こします。
前述のようにこの病気の撲滅プログラムにメルク社と北里研究所から無償供与され、世界中では毎年約3億人が服用し、この感染症の撲滅に多大なる成果をあげています。
③犬フィラリア症の予防への貢献
イベルメクチンは、犬のフィラリアを予防します。
現在多くの犬に投与されているフィラリア予防薬は、この製剤とその改良型の製剤です。
近年、犬の寿命が約15年に延びた長寿化の要因は、このお薬によるフィラリア予防の効果です。(1980年代以前の犬の寿命は約5-6年でした)
人間の福祉に大変重要であるペット(伴侶動物・コンパニオンアニマル)の健康を守ることで、人類の健康と福祉に大変貢献しています。
④世界の皮革産業への貢献
前述したようにイベルメクチンは、牛や馬の寄生虫疥癬(カイセン)やダニを駆除します。
疥癬やダニは、牛や馬の皮膚に寄生し、皮膚炎を起こします。このお薬により疥癬・毛包虫やダニが駆除されることにより、皮膚いわゆる皮(革、原皮)の状態が飛躍的に改善、世界の皮革産業の発展に多大なる貢献をしました。
*たつの市の地場産業である皮革産業へも貢献しています。
このように人間の健康だけでなく、家畜、ペット、そして我々の産業にまでも大きな貢献がなされたお薬なのです。