ここ一ヶ月、嘔吐下痢で来院されるワンチャンが非常に多くみられます。気温も上がり、換毛の時期と重なり体に堪えているのでしょう。検査を行うとかなり膵炎までも患っているワンチャンが多くみられました。お話しを伺うとやはり、いろんなおやつを与えていたり、暑さによる食欲低下のためにエサを変えていたりしていることが多く、元々、高脂血症や高中性脂肪の体質が隠れていた子もいました。再記載になりますが、膵炎についてお話しします。
膵臓は、胃から十二指腸に隣接して存在する臓器で、たんぱく質を分解・消化するための酵素や、胃酸を中和するための重炭酸など、様々な物質を分泌しています。 膵臓から分泌される消化酵素は強力な消化作用を持っているため、膵臓自身が消化されてしまう「自己消化」を防ぐための防御機構が備わっています。
しかし、何らかの原因で消化酵素の活性化が起こり、その防御機構が崩れてしまった場合に”自己消化”が進行し、膵炎が起こります。食べ物を消化する消化酵素で自分の身体が炎症を起こしてしまいます。 突然激しい症状が現れる「急性膵炎」と、比較的軽い症状が持続的する「慢性膵炎」に分けられ、犬では急性膵炎、猫では慢性膵炎が多いといわれています。
<原因> ・肥満や高脂肪食 ・薬剤(コルチコステロイド、利尿剤、抗菌薬など)
・膵臓の外傷や手術時の損傷 ・腎不全 などが挙げられますが、原因を特定できない場合が多いです。
<症状> ・食欲、元気の消失 ・嘔吐、下痢 ・腹痛 ・黄疸 ・発熱
*特徴的な症状が出ない場合や、重度になれば呼吸困難、出血性疾患、不整脈などの症状が出ることもあります。
*重篤になるとショックや死亡に至る場合もある怖い病気です。
<検査> 膵炎は特異的な症状がないので、他の疾患と鑑別するために様々な検査が必要になるこ とがあります。
・血液検査(一般血液検査、生化学検査、リパーゼ活性の測定)
・腹部レントゲン検査
・腹部超音波検査
・尿検査、糞便検査
<治療> ・輸液療法(点滴)
・低脂肪食の給餌
・抗菌剤、制吐剤、鎮痛剤などの薬物の投与
・輸血(出血傾向や低タンパク血症など全身状態の悪化が見られる場合)
*症状が改善してからも高脂肪食は避け、安静にしてください。一度膵炎を患うと再発がみられることが多いので、出来るだけ治癒後も低脂肪食を給餌を続けてあげて下さい。